メルセデス・ベンツが新型EV「GLCエレクトリック」の受注を日本で開始しました。また、2027年にはEQEに代わる電動「Eクラス」の投入も予告され、車名とデザインの統合路線が鮮明になっています。
「メルセデスの電気自動車といえばEQシリーズ」という常識が、いま大きく塗り替えられようとしています。日本で最も売れているメルセデス・ベンツの大黒柱「GLC」に待望の電気自動車(EV)モデルが登場し、予約受付がスタートしました。さらに海の向こうでは、不評だった空力重視の丸みを帯びたデザインを捨て、伝統的なセダンスタイルへ回帰する「電動Eクラス」の投入も予告されています。これまでEVを特別扱いしてきたメルセデスが、なぜ今になって既存の車名へと統合を進めるのか?新型GLCエレクトリックの驚きのスペックとともに、スリーポインテッドスターが描く次世代のEV戦略に迫ります。
ここがポイント
・日本市場の最量販モデルにEV版「GLCエレクトリック」が登場し、価格は913万円から設定
・エンジン車とはプラットフォームも内外装も完全な別物で、最大39.1インチの超巨大画面も用意
・航続距離は最大642kmを達成し、最大98万円のCEV補助金によって実質800万円台前半から狙える
・米国で生産終了となる「EQE」に代わり、2027年には白紙から新開発された「電動Eクラス」がデビュー予定
ベストセラーの名を継ぐ「GLCエレクトリック」の実力とは?

メルセデス・ベンツ日本が10月28日に予約注文の受付を開始したのは、プレミアムミドルサイズSUVのEVモデル「GLCエレクトリック」です。「普段街中でよく見かけるGLCのエンジンをモーターに載せ替えただけでしょ?」と思った方は要注意。実はこのクルマ、内燃機関(エンジン)を搭載する通常のGLCとは、車体の骨格となるプラットフォームから内外装のデザインに至るまで、完全に別物として仕立てられています。実質的には、かつて日本のEV市場を切り拓いた「EQC」の正統な後継モデルと呼ぶべき存在なのです。

まずは気になるボディサイズを比較してみましょう。ベースグレードとなる「GLC250エレクトリック」の寸法は、全長4845mm、全幅1890mm、全高1650mm、そして前後のタイヤ間の距離を示すホイールベースは2970mmとなっています。エンジン版のGLCと比べると、全長が120mm、ホイールベースが84mmもストレッチされており、全体的に伸びやかでクーペSUVにも通じるスポーティなプロポーションを手に入れました。それでいて空気抵抗の少なさを示すCd値は0.26という優秀な数値を叩き出しています。

エクステリアのハイライトは、なんといってもフロントマスクです。かつての「300SEL」など、メルセデスの歴史を彩った往年の名車たちの縦長グリルを現代風にアレンジしたパネルが採用されました。ここにはなんと合計942個ものバックライト付きポリカーボネート製ドットが埋め込まれており、中央のスリーポインテッドスターやグリルの枠とともに幻想的に発光します。夜間のドライブでバックミラーにこの姿が映ったら、思わず道を譲りたくなるような圧倒的な存在感です。

インテリアに目を移すと、そこにはさらなる驚きが待っています。標準仕様でも10.3インチのメーターパネル、14インチの中央画面、そして助手席用のディスプレイが並ぶ豪華な仕様ですが、オプションの「アドバンスドパッケージ」を選択すると、メルセデス史上最大となる39.1インチの「MBUXハイパースクリーン」が鎮座します。左右のピラー(柱)の間がほぼすべて画面で埋め尽くされる光景は圧巻の一言。一方で、ステアリングのスイッチ類やセンターコンソールのオーディオ音量調整など、よく使う機能にはしっかりと物理ボタンを残しているあたりは、老舗自動車メーカーらしい見事な配慮と言えるでしょう。

EVならではのパッケージングの恩恵も絶大です。フロントのボンネット下にはエンジンがないため、充電ケーブルなどをすっきりと収納できる128Lのフロントトランク(フランク)を確保。リアの荷室も通常時で520L、後席を倒せば最大1690Lという広大なスペースが出現します。
日本で展開されるラインナップと価格、スペックは以下の通りです。
・GLC250エレクトリック:価格913万円/一充電走行距離642km/CEV補助金98万円
・GLC300 4マティックエレクトリック:価格957万円/一充電走行距離618km/CEV補助金78万4000円
どちらのグレードも600kmを超える十分な航続距離を誇り、国のクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)を活用すれば、GLC250なら実質815万円ほどで乗り出すことが可能です。年内には人気モデル「GLB」のEV版のデビューも控えており、日本のメルセデスSUV陣営は一気に電動化が加速することになります。
さらば卵型フォルム!白紙から作られる「電動Eクラス」の衝撃

日本のSUV市場で「EQ」の冠を外したGLCエレクトリックが登場したのと時を同じくして、グローバル市場でもメルセデスの大きな方針転換が明らかになりました。米国市場において、2027年モデルをもって電動セダン「EQE」が廃止される見通しとなったのです。そしてその穴を埋める直接の後継車として、2027年に史上初となる「電動Eクラス」がワールドプレミアを迎えることが、同社の決算発表の場で最高経営責任者(CEO)から明かされました。
ここで読者の皆さんが「へぇ!」と思う業界のトレンドをひとつご紹介しましょう。かつてメルセデスは、EV専用ブランドとして「EQ」を立ち上げ、空気抵抗を極限まで減らすために「ワンボウ(一本の弓)」と呼ばれる卵のような丸っこいデザインをEQEやEQSに採用しました。しかし、長年のメルセデスファンや保守的な高級車ユーザーからは「威厳がない」「いつものメルセデスらしい形がいい」と敬遠され、特に中国や北米での販売が苦戦する要因となってしまったのです。ライバルのBMWが「5シリーズ」とEVの「i5」でほぼ同じ威風堂々としたデザインを採用して成功を収めたのとは対照的でした。

メルセデス経営陣はこの市場の声を真摯に受け止めました。CEOによれば、次期モデルとなる電動Eクラスは約3年前から「ほぼ白紙の状態」で開発がスタートしたとのこと。エンジン車と「Eクラス」という伝統の車名を共有しつつも、中身にはEV専用の最新プラットフォームを採用します。現在テスト走行を重ねている試作車を見ると、EQEのような極端な流線型は影を潜め、しっかりとしたトランクを持つ伝統的でフォーマルな3ボックスセダンのシルエットへと先祖返りしています。来年にも予定されているエンジン版Eクラスのマイナーチェンジモデルとデザイン言語を統一することで、「エンジンかモーターか」というパワートレインの違いだけで同じEクラスを選べるようになるわけです。
さらに興味深いのが、世界最大のEV市場である中国向けの戦略です。2027年後半に投入される中国仕様の電動Eクラスは、ほぼすべての部品を中国国内で現地調達して生産される最初のモデルになると説明されています。現地のニーズに合わせた最新のデジタル技術や広大な室内空間を実現しつつ、安全性や乗り心地といったメルセデス伝統の価値観を融合させる狙いです。
また、ハイパフォーマンス部門であるAMGが手がける高性能版の登場も確実視されており、BMW「i5 M60」やアウディ「S6 e-tron」といった手強いライバルたちと火花を散らすことになりそうです。なお、デザイン部門の幹部が「電動ワゴンは誰も買わない」と発言して電動Cクラスワゴンの開発を否定していることから、現時点でメルセデスのルーフが長いEVは「CLAシューティングブレーク」のみとなっており、電動Eクラスにステーションワゴンが設定されるかどうかは不透明な状況です。同社はAI(人工知能)を活用して新車の開発期間を最大30%短縮する計画も進めており、名門ブランドの逆襲に向けた体制づくりが急ピッチで進んでいます。
MotorG編集部の注目ポイント
今回のニュースで最も注目すべきは、メルセデスが「EVを特別扱いするのをやめた」という点に尽きます。これまでのように「EQC」や「EQE」といった別枠の未来カーとして売るのではなく、誰もが知っている「GLC」や「Eクラス」という信頼のブランド名に統合し、見た目もメルセデスらしい堂々としたスタイルに戻す。これは、EVが一部の先進的なマニア向けの乗り物から、多くの人が普通に選ぶ「当たり前の選択肢」へと移行した何よりの証拠です。ライバルのポルシェ・マカンEVやアウディQ6 e-tronなどがひしめく激戦区において、「いつものGLCの感覚で乗れる最新EV」というポジショニングは、日本のユーザーにとっても非常に魅力的に映るはずです。
もし今、プレミアムSUVの購入を検討しているなら、まずは発表されたばかりの「GLC250エレクトリック」の見積もりを取ってみることを強くおすすめします。車両本体価格は913万円ですが、98万円という満額に近い補助金が出るため、実はディーゼルエンジンを積む「GLC220d」にオプションをいくつか装着した価格帯とそれほど変わらなくなるのです。それでいて一回り大きく伸びやかなボディと、642kmという余裕の航続距離、そして最新の巨大スクリーンが手に入ると考えれば、コストパフォーマンスは抜群です。セダン派の方は、現行のEQEを大幅値引きで狙うか、それとも2027年に登場する王道スタイルの「電動Eクラス」まで待つか、じっくりと作戦を練ってみてはいかがでしょうか。
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