レンジローバーの頂点「SV ULTRA」が東京の旧高速道路で日本初公開されました。乗用車初の静電型スピーカーや本革を使わない先進の室内空間など、4000万円級の新たな高級車像をお伝えします。
車両価格4000万円超え、そして乗用車として世界初となる音響システムを搭載した究極の英国製SUVが、ついに日本の地を踏みました。2026年10月30日、ジャガー・ランドローバー・ジャパンは、東京・銀座の頭上を走る旧東京高速道路(KK線)を舞台に、ブランド史上最高峰のラグジュアリーモデル「レンジローバー SV ULTRA」を日本初公開しました。単なる高級車の枠を超え、現代アートや建築の領域にまで踏み込んだこの特別な1台は、これまでの「高級車=本革と過剰な装飾」という常識を真っ向から覆す野心作となっています。なぜ今、レンジローバーはここまで振り切ったモデルを世に送り出したのでしょうか。その裏に隠された驚きのテクノロジーと、新しい時代のラグジュアリーの正体に迫ります。
ここがポイント
・レンジローバー2027年モデルの頂点に君臨する「SV ULTRA」が日本初披露
・乗用車として世界初となる「静電型スピーカー」と足元の振動システムを搭載
・あえて本革を使わない最先端のエコ素材「Ultrafabrics」で極上の室内空間を実現
・最高出力615馬力のV8エンジンを搭載し、価格は約3607万円から4004万円に設定
・廃止された高速道路「KK線」にて11月3日までの5日間限定で特別展示を実施
常識を覆す「音響と素材」の革新とは?

今回お披露目された「レンジローバー SV ULTRA」において、最も注目すべきはインテリアに込められた数々の世界初テクノロジーです。なかでもオーディオファンや業界関係者を驚かせているのが、英国の音響メーカーと共同開発し、乗用車として世界で初めてオプション採用された静電型スピーカー「SVエレクトロスタティックサウンド」です。
ここで少し「へぇ!」と思える豆知識をご紹介しましょう。一般的なスピーカーは、磁石とコイルの力で円錐形の振動板(コーン)を前後に動かして音を出しています。しかし、この方式はどうしても部品の重さによって微細な音の歪みが生じてしまいます。一方、今回採用された「静電型」は、極めて薄いフィルム状の膜全体に電気の力をかけて直接振動させる仕組みです。高級オーディオの世界では究極のスピーカーとして知られる方式ですが、大型化しやすく湿気や振動に弱いため、過酷な車載環境への導入は長年「不可能」と言われてきました。それを克服して搭載したことで、まるでスピーカーの存在が消え、車体のずっと外側から澄み切った音が響いてくるような、未体験の広がりを実現しているのです。
さらに驚くべきは、耳だけでなく「全身で音を浴びる」仕組みです。シート内部に低周波を伝える振動装置が組み込まれているだけでなく、乗員の足元のフロアマット下に振動変換器を配置した「センサリーフロア」までも備えています。走行中のわずかなノイズさえも音楽の一部へと昇華させ、車内を完全なコンサートホールへと変貌させる執念には脱帽するほかありません。

また、シート素材に伝統的な本革(レザー)をあえて使っていない点も見逃せないトレンドです。採用されたのは、製造時の二酸化炭素排出量や水の使用量を劇的に減らせる高機能な合成皮革「Ultrafabrics(ウルトラファブリック)」です。オーキッドホワイトとシンダーグレイの2色で構成されたシートには、微細な穴の大きさを変えることでモザイク模様が浮かび上がる精巧な加工やレーザーによる彫り込みが施されています。近年、欧州の富裕層の間では「環境への配慮こそが最大のステータス」という価値観(サステナブル・ラグジュアリー)が急速に広まっており、本作はその最前線を走る象徴的なインテリアと言えます。

液体金属のような輝きと怪物の心臓部

エクステリアに目を向けると、専用のボディカラーである「チタンシルバー(グロスフィニッシュ)」が異彩を放っています。近年流行しているツヤ消しのマット塗装とは対極のアプローチで、極限まで細かく砕いた本物のアルミニウム粒子を塗料に配合することで、まるで溶けた金属がそのまま固まったかのような、深く妖艶な鏡面光沢を生み出しています。足元を飾る23インチの鍛造アルミホイールや各部のシルバーアクセントと相まって、派手なエアロパーツなどに頼らない「引き算の美学」が見事に表現されています。

しかし、その静かで気品あふれる佇まいの下には、恐るべきモンスターの心臓が隠されています。搭載されるパワーユニットは、4.4リッターV型8気筒ツインターボエンジンにマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたものです。最高出力は実に615馬力(452kW)、最大トルクは750Nmという、第一級のスーパーカーに匹敵するスペックを誇ります。

ここで、このクルマが市場でどのような立ち位置にあるのか、ライバル車と比較してみましょう。車両価格はショートホイールベース仕様が3607万円、ロングホイールベース仕様に至っては4004万円に達します。この4000万円ゾーンの超高級SUV市場には、ロールス・ロイス「カリナン」やベントレー「ベンテイガ」、メルセデス・マイバッハ「GLS」といった強豪がひしめいています。
ライバルたちが伝統的なウッドパネルや分厚いレザー、きらびやかなメッキ装飾で「分かりやすい豪華さ」をアピールする中、レンジローバー SV ULTRAは、モダン建築のようなミニマルなデザインと、本革を使わない先進性で真っ向から勝負を挑んでいます。しかも、これだけの芸術品でありながら、ベースは世界最高峰の悪路走破性を持つランドローバーです。その気になれば深い水たまりや険しい岩場すら涼しい顔でクリアできるという「圧倒的な実用性とタフさ」を秘めている点は、他のどのライバルにも真似できない最大の強みと言えるでしょう。実際に空間演出を手掛けた著名な建築家も、大きな模型を積める実用性とデザイン性の両立に惚れ込み、20年間レンジローバーを愛用し続けていると明かしています。
なぜ「旧高速道路」がお披露目の舞台なのか?

これほど特別なモデルの日本初公開の場として選ばれたのが、2026年10月30日から開催されている国内最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2026」です。しかもそのメイン会場は、2025年4月に廃止されたばかりの東京高速道路(通称:KK線)の跡地を「AUTOBAHN(アウトバーン)」と名付けた特別な空間でした。
かつて無数のクルマが行き交っていた高架上の料金所跡地に、東京を拠点に活動する著名な建築設計事務所と共同制作したインスタレーション作品「響き(HIBIKI)」が設営されました。高架上を吹き抜ける強い秋風から着想を得て、日本の伝統的な「風鈴」をイメージした無数のオブジェが吊るされ、風に揺れる音色と車内の革新的な音響技術が共鳴する、まさに都会の隠れ家(サンクチュアリ)と呼ぶにふさわしい空間が作り上げられています。会場には他にも、日本限定モデルである「レンジローバー ヴェラール ベルグレイヴィア エディション サテン(1298万円)」なども並び、ブランドの持つ高い美意識を来場者に強く印象づけていました。

メーカーの担当者が開発の背景について、既存の最上級グレードである「SV」の枠を超え、ラグジュアリーの限界に挑み続けた結果生まれたモデルであると説明していた通り、この展示自体が「クルマはもはや単なる移動手段ではなく、オーナーの美意識を映し出すアートピースである」という強烈なメッセージとなっています。
MotorG編集部の注目ポイント
今回発表された「レンジローバー SV ULTRA」を見て最も強く感じたのは、超高級車のルールが完全に変わったということです。これまでの4000万円クラスのクルマといえば、どれだけ希少な動物の革を使い、どれだけ職人が手作業で木を磨いたかという「伝統工芸の競争」でした。しかしレンジローバーは、化学繊維であるウルトラファブリックと、静電型スピーカーという「最先端テクノロジーの塊」で、伝統的な高級車以上の感動と静寂を作り出してしまったのです。現在、レンジローバーはマイルドハイブリッドやプラグインハイブリッドといった電動化技術を幅広く導入しており、今後はフルEV(電気自動車)の投入も予告されています。エンジン音が完全に消えるEV時代を見据えたとき、この「究極の静粛性と音響空間」という武器は、ライバルにとって最大の脅威になるはずです。
もしあなたが、他人の目を引くための派手なスーパーカーや、いかにもな高級セダンに飽き足らないのであれば、このSV ULTRAは間違いなく「アガリの1台」の筆頭候補になります。なお、KK線での特別展示は2026年10月30日から11月3日までのわずか5日間限定(入場有料・当日1日券3500円など)となっています。4000万円のクルマをすぐに購入するのは難しくとも、廃止された高速道路の上に浮かぶこの異次元の空間と、自動車の未来を示す液体金属のようなボディは、クルマ好きなら絶対に一目見ておく価値があります。この週末や11月3日の祝日にぜひ銀座の空へ足を運び、英国が誇る最新の狂気と美学をその目で確かめてみてはいかがでしょうか。
コメント (0)
コメントするにはログインしてください。
まだコメントはありません。